AWSで実現するサーバーレスアーキテクチャ — インフラ管理から解放される次世代システム開発

AWSで実現するサーバーレスアーキテクチャ — インフラ管理から解放される次世代システム開発

どうも、オーリスの「だいたいのイベントの幹事をする男」のマキハラです。

前回の記事では、AWSを活用したスケーラブルなインフラ構築についてご紹介しました。

今回は、その続編として近年注目を集めている?(もう遅い?)「サーバーレスアーキテクチャ」について解説してみようかなぁと例のごとく思い立ったので、勢いのまま書きなぐっている次第です。

当社でも最近の提案では採用することが増えてきた構成ですので、なるべく基本的なことから分かりやすく説明していきたいと思います。


クラウドコンピューティングの進化とともに、システム開発の手法も大きく変わりつつあります。その中でも「サーバーレスアーキテクチャ」は、開発の効率化やコスト削減、さらにはスケーラビリティの向上において革命的なアプローチとして注目されています。

本記事では、AWSを活用したサーバーレスアーキテクチャの基礎から、そのメリット、代表的なサービス、そして実際の活用事例までをなるべく分かりやすく解説します。サーバー管理から解放され、ビジネスロジックに集中できる次世代のシステム開発手法をぜひご理解ください。

そもそもサーバーレスとは?

サーバーレスとは、その名前とは裏腹に「サーバーが存在しない」わけではなく、「サーバーの存在を意識せずにアプリケーションを開発・運用できる」アーキテクチャのことです。開発者はサーバーのプロビジョニングや管理、スケーリングなどを気にする必要がなく、コードの記述に集中できます。必要なときだけリソースが自動的に割り当てられ、使った分だけ課金される仕組みになっています。

なぜ今サーバーレスが注目されているのか

システム開発において、サーバーレスアーキテクチャへの移行は単なるトレンドではなく、多くの企業に具体的なメリットをもたらしています。

従来のサーバーベースのシステムの場合:

  • サーバーのプロビジョニング、設定、メンテナンスなど管理業務が発生
  • 常時稼働しているため、使用率が低い時間帯でもコストが発生
  • トラフィック増加に備えて過剰なリソースを確保することが多い
  • スケーリングには手動操作や複雑な設定が必要

サーバーレスアーキテクチャの場合:

  • サーバー管理が不要で、開発に集中できる
  • 実行時間に対してのみ課金され、アイドル時間のコストが発生しない
  • 需要に応じて自動的にスケールアップ・ダウン
  • 開発から本番稼働までのリードタイムを大幅に短縮

サーバーレスアーキテクチャは特に、トラフィックの変動が激しいWebアプリケーション、イベント駆動型のシステム、マイクロサービスアーキテクチャを採用する開発において大きな価値を発揮します。開発チームはインフラストラクチャの管理ではなく、ビジネス価値を生み出すコード開発に専念できるのです。

【具体例】画像処理アプリケーションの場合

ユーザーがアップロードした画像を自動で最適化するサービスを例に考えてみましょう。日によって数十件から数万件まで処理量が変動します。

  • 従来の方法: 最大負荷に耐えられるサーバーを常時起動させておく必要があり、閑散期は大量のリソースが無駄になる
  • サーバーレスの方法: 画像がアップロードされた時だけ処理機能が起動し、処理後は自動で停止。1日10件でも10万件でも自動でスケールし、使った分だけ課金

AWSで実現するサーバーレスアーキテクチャ

AWSは、サーバーレスアプリケーションを構築するための豊富なサービス群を提供しています。それぞれのサービスが連携することで、柔軟性が高く、効率的なシステムを実現できます。代表的なサービスとその役割を見ていきましょう。

1. AWS Lambda

簡単に言うと: イベント発生時に自動実行されるコード

AWS Lambdaは、サーバーレスアーキテクチャの中核となるサービスです。Node.js、Python、Java、Go、Rubyなど多様な言語に対応し、コードをアップロードするだけで、イベント駆動で自動実行される環境を提供します。

例えば: ファイルのアップロード、DBの更新、APIリクエストなどをトリガーに処理を実行できます。

2. Amazon API Gateway

簡単に言うと: API呼び出しを管理し、Lambdaなどにつなげる窓口

API Gatewayは、RESTful APIやWebSocketを作成・公開・管理するためのサービスです。フロントエンドとバックエンドをつなぐ窓口として、認証やスロットリング、モニタリングなどの機能も提供します。

例えば: モバイルアプリからの注文リクエストを受け付け、適切なLambda関数に振り分けることができます。

3. Amazon DynamoDB

簡単に言うと: サーバーレス向けの高速NoSQLデータベース

DynamoDBは、完全マネージド型のNoSQLデータベースサービスで、サーバーレスアプリケーションのデータストアに最適です。自動スケーリングによりどんなデータ量にも対応でき、ミリ秒単位の応答性能を実現します。

例えば: ユーザープロファイルやセッション情報、アクセスログなどを保存・管理できます。

4. Amazon S3

簡単に言うと: 容量無制限のクラウドストレージ

Amazon S3は、サーバーレスアプリケーションのファイルストレージとして活用できるオブジェクトストレージサービスです。静的Webサイトのホスティングも可能で、高い耐久性と可用性を備えています。

例えば: ユーザーがアップロードした画像や動画、アプリケーションの静的アセットなどを保存できます。

5. Amazon CloudFront

簡単に言うと: 世界中にコンテンツを高速配信するCDN

CloudFrontは、グローバルに展開されたCDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスで、低レイテンシーでのコンテンツ配信を実現します。S3やLambda@Edgeと連携して、サーバーレスで高速なWebアプリケーションを構築できます。

例えば: 画像、動画、JavaScriptなどの静的ファイルをユーザーの近くから高速に配信できます。

6. Amazon EventBridge

簡単に言うと: サービス間のイベント連携を仲介するバス

EventBridgeは、様々なイベントソースからのイベントを収集し、ルールに基づいて適切なターゲット(Lambda関数など)に配信するサービスです。マイクロサービスやイベント駆動型アーキテクチャに最適です。

例えば: 「注文が入ったら在庫確認→支払い処理→配送手配」といった一連の処理を連携できます。

サーバーレスアプリケーション構築の基本的な流れ

  1. 要件定義とアーキテクチャ設計

    従来のシステムと同様、まずは要件を明確にし、サーバーレスアーキテクチャに適した設計を行います。機能ごとに分割し、イベント駆動の流れを設計します。

  2. Lambda関数の開発

    ビジネスロジックをLambda関数として実装します。各関数は単一責任の原則に従い、一つの明確な役割を持つよう設計します。

  3. データストアの設計と実装

    DynamoDBやS3などを使用して、アプリケーションのデータモデルを設計・実装します。NoSQLの特性を理解し、アクセスパターンに最適化します。

  4. APIの設計と実装

    API Gatewayを使用して、フロントエンドからアクセスするためのAPIを設計・実装します。認証・認可の仕組みも組み込みます。

  5. イベント連携の実装

    EventBridgeなどを使用して、サービス間の連携を実装します。イベント駆動型の非同期処理フローを構築します。

  6. デプロイとテスト

    AWS CloudFormationやAWS SAM、AWS CDKなどのIaCツールを使用して、インフラをコードとして管理・デプロイします。

  7. モニタリングと運用

    AWS CloudWatch、AWS X-Rayなどを活用して、サーバーレスアプリケーションのパフォーマンスと可用性を監視します。

サーバーレスの具体的な活用シーン

Webアプリケーション・API

API GatewayとLambdaを組み合わせたRESTful APIや、S3とCloudFrontを活用した静的Webサイトなど、フルスタックのWebアプリケーションをサーバーレスで構築できます。トラフィック変動に自動対応し、コスト効率も向上します。

データ処理・ETLパイプライン

S3へのファイルアップロードをトリガーにLambdaが起動し、データ処理やETL(抽出・変換・ロード)処理を実行する仕組みを構築できます。大量データの処理も自動スケーリングで対応可能です。

バックエンド処理自動化

定期的なデータ集計、バッチ処理、通知送信などのバックエンド処理をAmazon EventBridgeのスケジュールイベントとLambdaで自動化できます。管理の手間を削減しつつ、安定した実行を実現します。

モバイルアプリケーションのバックエンド

API Gateway、Lambda、DynamoDBなどを組み合わせて、モバイルアプリケーションのバックエンドをサーバーレスで構築できます。認証、データ保存、プッシュ通知など、必要な機能を効率的に実装できます。

サーバーレス開発におけるオーリスの強み

専門知識と豊富な経験

当社は、複数のサーバーレスプロジェクトを成功に導いた実績があります。最新のベストプラクティスに基づいた設計・実装で、高品質なシステムを提供します。

コスト最適化のノウハウ

サーバーレスは使った分だけ課金されるため、適切な設計と実装が重要です。当社は、Lambda関数の最適化、DynamoDBのキャパシティ設計など、コスト効率を最大化するノウハウを持っています。

ビジネスとテクノロジーの橋渡し

技術だけでなく、お客様のビジネス要件を深く理解し、最適なサーバーレスソリューションを提案します。技術的な複雑さをシンプルに説明し、ビジネス価値を最大化するシステム開発を実現します。

【事例】基盤システムとECサイトの連携用shopifyアプリ

課題: 大手企業の基幹システムとshopifyで構築されたECサイトを連携させる必要があり、日々大量のアクセスと注文データをスムーズに処理する仕組みが求められていた

解決策: API Gateway、Lambda、Amplifyを組み合わせたサーバーレスアーキテクチャでshopifyアプリを開発。基幹システムとECサイト間のデータ連携をリアルタイムに実現

結果: 1日数万件の注文データを安定して処理。在庫情報の反映が従来の一日一回のバッチ処理からリアルタイム連携へと進化し、欠品率が45%改善

「サーバーレスで構築したことで、突発的なアクセス増加にも柔軟に対応でき、開発から運用まで工数とコストを大幅に削減できました。ECビジネスの成長にインフラが追いつかない問題が解消されました」とお客様からご評価いただいています。

サーバーレス導入時の注意点

サーバーレスアーキテクチャは多くのメリットをもたらしますが、特性を理解して適切に活用することが重要です。主な注意点をご紹介します。

コールドスタートに注意

Lambda関数が一定時間使用されないと「コールドスタート」と呼ばれる初期化の遅延が発生します。レスポンス時間が重要なアプリケーションでは、定期的な実行やProvisioned Concurrencyなどの対策を検討する必要があります。

実行時間の制限

Lambda関数の最大実行時間は15分に制限されています。長時間実行が必要な処理は、複数の関数に分割するか、Step Functionsを使ったステートマシンで管理するなどの工夫が必要です。

モニタリングの複雑さ

分散されたマイクロサービスの監視はより複雑になります。AWS CloudWatch、X-Ray、Dashbirdなどのツールを活用し、統合的なモニタリング戦略を立てることが重要です。

ベンダーロックイン

AWSのサービスに強く依存したアーキテクチャになるため、将来的なクラウド移行の際にはコストがかかる可能性があります。Serverless Frameworkなどの抽象化ツールの活用も検討すると良いでしょう。

まとめ

サーバーレスアーキテクチャは、インフラ管理の負担を軽減し、スケーラビリティを向上させ、コスト効率を高める革新的なアプローチです。AWSのLambda、API Gateway、DynamoDB、S3などのサービスを組み合わせることで、柔軟で高性能なシステムを構築することができます。

サーバーレスのメリット(まとめ)

  • サーバー管理から解放され、本質的な開発に集中できる
  • 使った分だけ課金される従量課金制でコスト効率が向上
  • 需要に応じて自動でスケールするため、急激なトラフィック増加にも対応
  • 開発から本番稼働までのリードタイムが短縮される
  • マイクロサービスアーキテクチャとの相性が良く、柔軟な開発が可能

私たちオーリスは、AWSのサーバーレス技術を駆使して、お客様のビジネス課題を解決するシステム開発を提供しています。サーバー管理の負担から解放され、ビジネスの成長に集中できるサーバーレスアーキテクチャの導入を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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次回予告:AWSのセキュリティ対策

次回はAWSを安全に活用するためのセキュリティ対策について解説します。IAMの適切な設定から、VPC、WAF、AWS Guarddutyなどを活用したセキュアなインフラ構築の方法をご紹介します。お楽しみに!

この記事を書いた人

mackey

mackey

【プロフィール】

オーリスのなんでも屋さん。

本物のフルスタックエンジニア(自称)

【専門分野】

組込み/IoT/web/AR/VR/unity/ C/C++/C♯/Java/php/Python/JavaScript/Swift Laravel/AWS etc...
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